2009.07/29 [Wed]
【発達障害】心理検査の答え合わせ?!
発達障害の診断確を希望して受診してくださる患者さんとお会いしていると,WAIS-IIIやWISC-IIIなどの心理検査をさせていただくことがとても多くなります。
WAISなどで発達障害特性のすべてが明らかになるわけではないけれど,それでもやはり得られる所見はご本人の特徴をうまく浮かび上がらせてくれます。
さて,先日ある思春期の患者さんに検査の結果からわかったご本人の得意な部分や苦手な部分について診察室でお話させていただいていたところ,同席してくださっていた患者さんのお母さんがちょっと言いにくそうにこう切り出してくださいました。
「あのぉ…,この検査の答えって教えていただけるんでしょうか?」
…え,答え?
「この子,検査を受けてからずっと『正解はどうだったんだろう?』って知りたがってるもので,ねぇ?」
ご本人を見ると,ちょっとうつむいて照れくさそうに笑っています。
…なるほど。
今まで検査結果をお伝えした患者さんはたくさんいらっしゃるけれど,解答を知りたいと言われたことは初めてだったので,正直ちょっと驚きました。
でも,私自身も気になっていたんですよね。
ことばで答えるようなタイプの質問ならそのとき患者さんがどのように解答されたのかがあとから確認できるのですが,視覚的な課題なんかだと最終形がどういう答えだったかはわかるけれど,その答えを導き出したプロセスはあとからではわからないのです。
自分自身がテスターならある程度ここは「こんなふうに答えてくださってたな」って思い出すこともできるけれど,心理スタッフに検査をお願いしたケースになると本当にわからなくて。
なぜこの患者さんはこの問題を間違ったのだろう,ということがわからないのは,じつは私にとってもすごく残念なことなのです。
なので,ルール違反を承知で(ごめんなさい!)患者さんと一緒に一部の検査を振り返ってみることにしました。
このやりかたをお勧めする意図は決してないのですが…検査を改めて振り返ってみてよかった! と個人的にはとても満足しています。
視覚的な手がかりをうまくキャッチするのが苦手だと思われていたこの患者さん,じつはとてもこまかい視覚情報にも気付いていて,その結果そちらに引きずられてもっと重要な情報を無視する結果になってしまったり細かい情報を頼りに難しく考えすぎてしまっていたりしていた部分がたくさん見つかったのでした。
それなら,視覚情報を頼らないんじゃなくて,視覚情報のなかでも重要な部分が際立つように強調したり,ことばで補足したりするようにしたらうまく情報をお伝えすることができる,ってことだ…。
一緒に検査のおさらいをしてみて気付いたことも改めて伝えさせていただきました。
適切な行動であったかどうかは今も自信がないしちょっぴり後悔もありますが,今回やったことを少なくともこの患者さんに役立てることはできそうです。
私にとってもいろいろ考えさせられる,貴重な機会でした。
WAISなどで発達障害特性のすべてが明らかになるわけではないけれど,それでもやはり得られる所見はご本人の特徴をうまく浮かび上がらせてくれます。
さて,先日ある思春期の患者さんに検査の結果からわかったご本人の得意な部分や苦手な部分について診察室でお話させていただいていたところ,同席してくださっていた患者さんのお母さんがちょっと言いにくそうにこう切り出してくださいました。
「あのぉ…,この検査の答えって教えていただけるんでしょうか?」
…え,答え?
「この子,検査を受けてからずっと『正解はどうだったんだろう?』って知りたがってるもので,ねぇ?」
ご本人を見ると,ちょっとうつむいて照れくさそうに笑っています。
…なるほど。
今まで検査結果をお伝えした患者さんはたくさんいらっしゃるけれど,解答を知りたいと言われたことは初めてだったので,正直ちょっと驚きました。
でも,私自身も気になっていたんですよね。
ことばで答えるようなタイプの質問ならそのとき患者さんがどのように解答されたのかがあとから確認できるのですが,視覚的な課題なんかだと最終形がどういう答えだったかはわかるけれど,その答えを導き出したプロセスはあとからではわからないのです。
自分自身がテスターならある程度ここは「こんなふうに答えてくださってたな」って思い出すこともできるけれど,心理スタッフに検査をお願いしたケースになると本当にわからなくて。
なぜこの患者さんはこの問題を間違ったのだろう,ということがわからないのは,じつは私にとってもすごく残念なことなのです。
なので,ルール違反を承知で(ごめんなさい!)患者さんと一緒に一部の検査を振り返ってみることにしました。
このやりかたをお勧めする意図は決してないのですが…検査を改めて振り返ってみてよかった! と個人的にはとても満足しています。
視覚的な手がかりをうまくキャッチするのが苦手だと思われていたこの患者さん,じつはとてもこまかい視覚情報にも気付いていて,その結果そちらに引きずられてもっと重要な情報を無視する結果になってしまったり細かい情報を頼りに難しく考えすぎてしまっていたりしていた部分がたくさん見つかったのでした。
それなら,視覚情報を頼らないんじゃなくて,視覚情報のなかでも重要な部分が際立つように強調したり,ことばで補足したりするようにしたらうまく情報をお伝えすることができる,ってことだ…。
一緒に検査のおさらいをしてみて気付いたことも改めて伝えさせていただきました。
適切な行動であったかどうかは今も自信がないしちょっぴり後悔もありますが,今回やったことを少なくともこの患者さんに役立てることはできそうです。
私にとってもいろいろ考えさせられる,貴重な機会でした。
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検査の「答え合わせ」について
総合病院精神科で心理士をしております、ハンドルネーム・ロテ職人と申します。いつも楽しく拝見させていただいております。
さて、私の業務の半分以上は心理アセスメントでして、WAISやWISCなどの使用頻度も高いのですが、施行中、あるいは施行後の感想を尋ねたときなどに、「答えは教えてもらえないんですか?」とおっしゃる患者さんは結構いらっしゃいます。明らかに正答があるものですし、そういった反応が出てくるのは自然なことだと思います。
それで、私は原則として答えは教えません。一番の理由は「再検査の可能性がゼロではないから」です。
さすがに数日後、数週間後の再検査というのはあり得ませんが、長い経過の中で数年後に再検査…ということは珍しくないと思います。その際、前の施行後に「答え合わせ」をしたことが再検査の結果に影響を与える可能性は否定できないでしょう。
もちろん、再検査をする可能性がゼロである、つまり一生その患者さんとつきあうことが決定している場合に、そうすることが臨床的に有益であると考えられるのであれば答え合わせもいいかもしれません。ただ、再検査の可能性がゼロであることは現実的にはあり得ないと思われます。
> 視覚的な課題なんかだと
> 最終形がどういう答えだったかはわかるけれど,
> その答えを導き出したプロセスは
> あとからではわからないのです。
>
> 自分自身がテスターならある程度
> ここは「こんなふうに答えてくださってたな」って
> 思い出すこともできるけれど,
> 心理スタッフに検査をお願いしたケースになると
> 本当にわからなくて。
もしこの点が知りたいのであれば、直接その心理スタッフに尋ねてはいかがでしょうか。あるいは常日頃からそういった要素を報告書に入れてもらうような依頼をするのもいいかもしれません。
本来であれば、最終的な結果だけではなくそうしたプロセスも考慮した上での「心理アセスメント」なのではないかと思います。私の場合、そうしたプロセスに関して気になる患者さんの場合、報告書の中で明言しなかったとしても少なくとも口頭で依頼をした医師に伝えるようにしています。
NINAさんがおっしゃっているような理由で答え合わせをするのは、患者さんが再検査の際に得られるかもしれない利益を損なう可能性があります。
…ここまで書いて思ったのですがひょっとして「WISCを行う可能性はゼロ」な患者さんなのでしょうか?その場合であっても、WAISを行う可能性はゼロではないわけですし、やはり避けるべきかと思うのですがいかがでしょうか?
長文・乱文失礼いたしました。