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児童精神科医NINAの休憩室

m3のblogからお引っ越ししました。児童精神科医NINAのblogです。 今は児童も成人も診させていただいている,地方の勤務医です。 日々思ったことを自由に書き留めてみようと思います。 コメント大歓迎! ですが,レスが遅れることがあります。どうぞご了承ください。

【発達障害】心理検査の答え合わせ?!

発達障害の診断確を希望して受診してくださる患者さんとお会いしていると,WAIS-IIIやWISC-IIIなどの心理検査をさせていただくことがとても多くなります。

WAISなどで発達障害特性のすべてが明らかになるわけではないけれど,それでもやはり得られる所見はご本人の特徴をうまく浮かび上がらせてくれます。


さて,先日ある思春期の患者さんに検査の結果からわかったご本人の得意な部分や苦手な部分について診察室でお話させていただいていたところ,同席してくださっていた患者さんのお母さんがちょっと言いにくそうにこう切り出してくださいました。

「あのぉ…,この検査の答えって教えていただけるんでしょうか?」

…え,答え?

「この子,検査を受けてからずっと『正解はどうだったんだろう?』って知りたがってるもので,ねぇ?」
ご本人を見ると,ちょっとうつむいて照れくさそうに笑っています。


…なるほど。

今まで検査結果をお伝えした患者さんはたくさんいらっしゃるけれど,解答を知りたいと言われたことは初めてだったので,正直ちょっと驚きました。

でも,私自身も気になっていたんですよね。
ことばで答えるようなタイプの質問ならそのとき患者さんがどのように解答されたのかがあとから確認できるのですが,視覚的な課題なんかだと最終形がどういう答えだったかはわかるけれど,その答えを導き出したプロセスはあとからではわからないのです。

自分自身がテスターならある程度ここは「こんなふうに答えてくださってたな」って思い出すこともできるけれど,心理スタッフに検査をお願いしたケースになると本当にわからなくて。

なぜこの患者さんはこの問題を間違ったのだろう,ということがわからないのは,じつは私にとってもすごく残念なことなのです。


なので,ルール違反を承知で(ごめんなさい!)患者さんと一緒に一部の検査を振り返ってみることにしました。



このやりかたをお勧めする意図は決してないのですが…検査を改めて振り返ってみてよかった! と個人的にはとても満足しています。

視覚的な手がかりをうまくキャッチするのが苦手だと思われていたこの患者さん,じつはとてもこまかい視覚情報にも気付いていて,その結果そちらに引きずられてもっと重要な情報を無視する結果になってしまったり細かい情報を頼りに難しく考えすぎてしまっていたりしていた部分がたくさん見つかったのでした。

それなら,視覚情報を頼らないんじゃなくて,視覚情報のなかでも重要な部分が際立つように強調したり,ことばで補足したりするようにしたらうまく情報をお伝えすることができる,ってことだ…。

一緒に検査のおさらいをしてみて気付いたことも改めて伝えさせていただきました。


適切な行動であったかどうかは今も自信がないしちょっぴり後悔もありますが,今回やったことを少なくともこの患者さんに役立てることはできそうです。

私にとってもいろいろ考えさせられる,貴重な機会でした。
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*Comment

検査の「答え合わせ」について

はじめまして。

総合病院精神科で心理士をしております、ハンドルネーム・ロテ職人と申します。いつも楽しく拝見させていただいております。

さて、私の業務の半分以上は心理アセスメントでして、WAISやWISCなどの使用頻度も高いのですが、施行中、あるいは施行後の感想を尋ねたときなどに、「答えは教えてもらえないんですか?」とおっしゃる患者さんは結構いらっしゃいます。明らかに正答があるものですし、そういった反応が出てくるのは自然なことだと思います。

それで、私は原則として答えは教えません。一番の理由は「再検査の可能性がゼロではないから」です。

さすがに数日後、数週間後の再検査というのはあり得ませんが、長い経過の中で数年後に再検査…ということは珍しくないと思います。その際、前の施行後に「答え合わせ」をしたことが再検査の結果に影響を与える可能性は否定できないでしょう。

もちろん、再検査をする可能性がゼロである、つまり一生その患者さんとつきあうことが決定している場合に、そうすることが臨床的に有益であると考えられるのであれば答え合わせもいいかもしれません。ただ、再検査の可能性がゼロであることは現実的にはあり得ないと思われます。

> 視覚的な課題なんかだと
> 最終形がどういう答えだったかはわかるけれど,
> その答えを導き出したプロセスは
> あとからではわからないのです。
>
> 自分自身がテスターならある程度
> ここは「こんなふうに答えてくださってたな」って
> 思い出すこともできるけれど,
> 心理スタッフに検査をお願いしたケースになると
> 本当にわからなくて。

もしこの点が知りたいのであれば、直接その心理スタッフに尋ねてはいかがでしょうか。あるいは常日頃からそういった要素を報告書に入れてもらうような依頼をするのもいいかもしれません。

本来であれば、最終的な結果だけではなくそうしたプロセスも考慮した上での「心理アセスメント」なのではないかと思います。私の場合、そうしたプロセスに関して気になる患者さんの場合、報告書の中で明言しなかったとしても少なくとも口頭で依頼をした医師に伝えるようにしています。

NINAさんがおっしゃっているような理由で答え合わせをするのは、患者さんが再検査の際に得られるかもしれない利益を損なう可能性があります。

…ここまで書いて思ったのですがひょっとして「WISCを行う可能性はゼロ」な患者さんなのでしょうか?その場合であっても、WAISを行う可能性はゼロではないわけですし、やはり避けるべきかと思うのですがいかがでしょうか?

長文・乱文失礼いたしました。
  • posted by ロテ職人
  • URL
  • 2009.07/29 17:48分
  • [Edit]

“答え合わせ”ではないのでは?

>NINAさん
>このやりかたをお勧めする意図は決してないのですが…

とおっしゃっているので、いろいろお考えなのだろうとお察ししますが、
基本的にはロテさんの考えに近いです。心理士風味だからかしらん。
エントリだけ拝見してまず思ったのは、
 「心理スタッフ何やってんの?」「アセスメントの意味知ってんの?」
ということなのでした。何のためにチームが存在してるのだろう・・・。

とりあえず、“答え合わせ”を字義通りにされたのではないだろうなあ、
とはわたしは勝手に思っておりますが、ある意味誤解されるタイトルかもしれません。
まあ役に立たん誤解は放置してもよい気もするが。(´<_`  )
  • posted by moo
  • URL
  • 2009.07/29 21:52分
  • [Edit]

ありがとうございます。

重要なご指摘ありがとうございます。

あまり細かく書くと患者さんの年齢が特定されてしまいそうなので書きませんでしたが…ロテ職人さんご想像のとおり,この方に同じ検査を再度受けていただく機会はないだろうという判断で今回は特別に「振り返り」をすることにしました。

私自身が検査場面の本番に同席することはないのですが,テスターをしてくださっている心理士さんには「答えを知りたい」という希望をおっしゃる患者さんはいらっしゃっても(もちろんお断りします),検査から数週間経った診察の場(検査結果をお伝えするとき)でまで粘っておっしゃった方は初めてだったのです。

心理士さんからは,たとえば絵画配列のような課題ならどのカードをどこに入れるかで最後まで迷っていた,という所見までは教えてもらうことがあるのですが,何故そのカードを置く位置を迷ったのか,迷った理由や根拠については心理士さんも検査中に患者さんご本人から確認できないことがありますよね? そこを直接お聞きしながら振り返ることができたのは意味があったように感じています。

…いずれにせよ,記事本文にも書いているとおり原則として推奨されるべき行為ではないことは重々承知のうえでのことでした。ごめんなさい!
  • posted by NINA
  • URL
  • 2009.07/29 22:43分
  • [Edit]

あ,mooさん…

mooさんが間でコメントくださっていたことに気付かず,ロテ職人さんだけにレスしてしまいました。ごめんなさい!

うちの心理職の名誉のために言っておくと,検査結果も正答かどうかだけでなくて検査中にみられたさまざまな付随する情報もきちんと伝えてくださるし,私はとても信頼しています。文中の「心理スタッフに検査をお願いしたケースになると本当にわからなくて。」という書き方がいけないんですね,きっと…。

タイトルの「答え合わせ」というのも誤解の元なのかもしれません。あぁ…。私の勝手な思いとしては,「?!」の部分に「ただの答え合わせじゃない」という意図を込めたつもりだったのですけど…。

たしかに患者さんにとっては正答を知るための機会になっていたのですけど,私にとっては心理士さんからは聞けなかった情報(患者さんの考え方の道筋)を改めて目の前で確認しながら聞かせていただくのが目的だったのです。

ううむ。記事を書いたあとにもいろいろ考えさせられます。
これからはできるだけ誤解を生じないような書き方を意識してみますね。お騒がせして本当にすみません。
  • posted by NINA
  • URL
  • 2009.07/30 00:40分
  • [Edit]

お願い

NINAさーーーん! 仕事がだいぶ落ち着きましたーーー。
と言うわけで、まったり巡回しておりますが、
えとえと、リンクしていただいておりますが、
サイト名が一部変換間違いだと思われます・・・。
 (誤)発達障害庵
  ↓
 (正)発達臨床庵
お手数をおかけいたしますが、修正お願いできますでしょうか。
細かいところにすみません。ではではこの夏も乗りきりましょう!
  • posted by moo
  • URL
  • 2009.07/30 10:42分
  • [Edit]

うわわわわ~っ!!

mooさん、ごめんなさいっ!!
せっかくリンク張らせていただいているのにいちばん大切な看板が誤っていただなんて本当に申し訳ありません。至急訂正させていただきました。

いろいろととんちんかんな私ですので、これからも何かありましたらどうかご遠慮なくビシビシとご指摘くださいませ。

お忙しい時期を脱されたようで何よりですが、どうぞおからだにお気をつけてお過ごしください。
  • posted by NINA
  • URL
  • 2009.07/30 16:35分
  • [Edit]

NoTitle

はじめまして。
当事者がコメントしてもいいのかどうかわかりませんが…答えを教えてもらえない事がイヤでした。
答え合わせのないテスト、しかも結果を全部は教えてもらえない検査なんか!!と
大人げなくいつまでもドクターにブツブツ言っていた事を思い出しました。
検査を受けて4年が経ちますが、答えられなかった問題や、目で見た内容はハッキリ覚えてます。
もう一回、同じ検査を受けたら結果が違う気がします。
  • posted by 絢未
  • URL
  • 2009.07/30 22:00分
  • [Edit]

ありがとうございます。

絢未さん,はじめまして。コメントありがとうございます。

検査を受けられてから4年間も覚えていらっしゃるんですね…そんなに真剣に受けていただいたら検査をするほうもさせていただく甲斐があるというものです。そのときの力をきっと存分に発揮されたことと思います。

時を経て検査結果の変化をみるためにまた同じ検査を受けていただく機会があるかもしれないので,解答をお教えすることはできないことになっているのですが,受ける立場としたら不全感が残りますよね。仕方がないこと,いずれまた検査を受けていただく方にとっての利益のため…とはいえ申し訳ない気持ちもあったりします。

貴重なご感想をありがとうございました。
また遊びにいらしてくださいね♪
  • posted by NINA
  • URL
  • 2009.07/30 23:34分
  • [Edit]

総論と各論

ということなのかなぁと思いました。

総論としてはすでにコメントされているような対応が一般的でしょう。
とはいえ、総論だけでは太刀打ちできない事もあるかもしれません(多分、あんまり無いですけど)。
一方、各論は守秘義務に抵触する可能性が高いので、詳しくかけませんよね。

そこに書き手と読み手の齟齬が出たのだろうと思いました。
一般的な心理士からすると、一読後の印象はロテ職人さんやmooさんがコメントされた通りです。

テスト結果をどう使うか、というのはテストそのものだけではなく、
職種間のコミュニケーションも問われる問題だと思いました。
  • posted by 五。
  • URL
  • 2009.08/01 00:01分
  • [Edit]

そうですね。

五。さん,コメントありがとうございます。

そうですね,総論と各論に分けて考えるとしっくりくるように私も思います。

総論的にどのような対応が望ましいのかは理解しているつもりですが,今回のケースではあえて例外的なことをしてみたのです(だからこそblog記事にもした,というのもあります)。

何故例外的なことをしたかという部分についてはここには詳しく書けないのですが,患者さんの年齢という要素がまずあって,それから私の勤務先とこの患者さんとの関わりの上での少し特殊な事情がありました。

…いずれにせよ誤解や齟齬を招くような文章を書いたのはこの私ですので,みなさんをお騒がせして申し訳なく思っています。いろいろご指摘いただきありがとうございました。
  • posted by NINA
  • URL
  • 2009.08/01 01:23分
  • [Edit]

アセスメントの質

はじめまして。
私には5年程前に発達障害の疑いが浮上しました。
その後WAIS-Ⅲを受けたのですが、医師からは下位項目のスコアとスコアにばらつきがあることしか知らされませんでした。
「赤の他人の前で1題ずつ正誤を確認され恥ずかしく思いながら受けたのにこれだけ?」と不満で、カルテ開示請求をしたのですが、そちらにも「検査者とのコミュニケーションが乏しい」としか書かれていませんでした。
こちらのエントリーを拝見し、検査者・評価者によってこれほどアセスメント内容に違いがあるのかと愕然としました。

私の状態は当時からますます悪くなり、もう一度別の機関で診断やアドバイスを受けたいと思いつつもWAIS-Ⅲを再び受けるのは結構大変なので、躊躇していました。
こちらのエントリー記事を参考に考えたいです。

> にゃんさん

この記事にいただいたコメントにレスし忘れておりました…gめんなさい。

上のコメント欄で議論されているとおり,本当はあとから検査の答えについてやりとりするのは違反(?)です。だいぶん前の記事なので書いてしまうと,実際この患者さんが受けた検査はWISCで,年齢的に次に受けるとしたらWAISという成人版になると思われる時期のことだったので,WISCの答え合わせをしながら患者さんの考え方の道筋を一緒に振り返るのもアリかな,と思ったわけです。みんながみんなこういう検査の受け方をしているわけではありませんので,そこはいちおうお断りしておきますね。

同じ検査を複数回受けると結果が変わってくることはよくあります。そのときの気分や意欲,集中力などによっても変わってくると思うので,再検査してみられるならご自分の調子がよくなってからのほうが正確に検査が行えると思います。
  • posted by NINA
  • URL
  • 2010.07/25 00:38分
  • [Edit]

NoTitle

レスありがとうございます。
検査を今後も受ける可能性を考えると、「答え合わせ」をしてはならないということは承知しています。
私もできなかった課題の正解は気になりますが・・・。

調子がよくなってからの検査、そうですね。
自身の体調を整えるほかにきちんとアセスメントをしてくれる医療機関も探さなければなりませんが、こちらも至難の業です。
実は以前WAISを受けたときはこれが知能検査であることすら知らされておらず、「心理検査」とだけ聞いていました。
さらにロールシャッハ、バウムなど盛りだくさんで・・・。
ゆえに検査中に「この検査はおそらく知能検査だと思うけれど、何か他に意図があるのかも・・・」などと注意がそれ、その間に制限時間がきてしまった課題もあるのです。これでは正しい評価なんて望めませんよね。
せめて疑問を持ったときに確認すべきでした。
このような検査者ばかりではないとこちらで知り、ためになりました。

柔軟性のある、素晴らしい対応です

記事掲載から、かなり時間がたっていますが、今日初めて読んだので、ひとこと。

検査をしていながら、結果の説明をきちんとしないと、当然ながら患者さんは不信感をもちます。 答えを知りたいというのは、まったく自然な思いですよね。

お金を払ってテストを受けさせられたのに、医療側の勝手な都合で結果を満足に知らせてもらえない。 これは変です。 発達障害傾向をもつ人ほど、この不条理を強く感じるような気がします。

今回NINA先生は、説明することのマイナス面を十分認識しつつ、最良の方法を考えて行動されたわけで、なんら問題ないと思います。 そもそも、医療はそのような柔軟性をもつべきものだと思います。


ちなみに私は精神科医です。発達障害の臨床はしていませんが、私自身には発達障害の傾向が多少あるらしいです。 (ものすごく?かもしれない。普段は隠しておとなしくしてますけど・・)
  • posted by くろりんどう
  • URL
  • 2010.10/17 11:20分
  • [Edit]

> くろりんどう先生

コメントありがとうございます。
ルール違反を犯していることは自覚して今でも反省しているできごとではありますが,そんなふうに言っていただけるとちょっとホッとします。

答えを振り返るかどうかは別にしても,フィードバックは丁寧にポジティブにしたいと心掛けています…これからもその部分は大切にできたらいいな,と思います。
  • posted by NINA
  • URL
  • 2010.10/17 23:52分
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  • posted by
  • 2010.11/09 11:56分
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  • 2011.02/01 11:03分
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  • 2011.11/30 16:26分
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Author:NINA
地元のこどもたちの元気な育ちを,ご家族と一緒に応援させていただきたいと思いながら,日々診療に取り組んでいます。
家に帰れば一児の母。「楽しい子育て」を目標に奮闘中です。
趣味は音楽と写真。ピアノを弾きながらこどもと童謡を歌ったり,デジタル一眼レフを携えてお散歩したりするのが私のリラックスタイムです。

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